ビジネスに役立つ情報サイト。 ヤマダ電機法人営業部と連動し、中小企業に役立つ経営情報やIT情報を発信します。

RSSfeed

2013.05.31 (シャニム43号掲載)

世界のブランド 「ヤマダ」に集結! 2


太陽光発電トップインタビュー

次世代見据えた技術で顧客をバックアップ

 

世界を迎え撃つ重電の雄
東芝
社会インフラシステム社

日本・東京 

 

TOSHIBA/Dr.Michihiko Inaba Senior Fellow
電力流通システム事業部

稲葉 道彦 技監

 

聞き手征矢野毅彦(シャニム編集長)
写真大谷十夢治

 

前提はエネルギー・ミックス

 ── まず、東芝グループ内での、太陽光発電事業の位置付けからお願いします。

 稲葉 太陽光事業の取り組みの当初、まずはスマートグリッド時代に太陽光がどのような役割を果たすのかについて、徹底的に議論しました。再生可能エネルギーの発展段階において、発電はトラディショナルなエネルギーと再生可能エネルギーがミックスされた状態になります。

 そうなると各々のよさをどう出していくか、という工夫をしなければいけない。ミックスした時にどういうコンビネーションを作り上げるか。これが一番重要になってきます。

 東芝のスタンスとしては電力流通、エネルギーの流通、エネルギーの需給バランスなどを、うまく活用するための太陽光発電システムを提供すること。これが第一の目的です。太陽光発電だけあればいい、というような考え方とは、まったく違う点が特長ですね。

 そして、電力会社向けの太陽光システムから事業をスタートし、「何が必要なのか」という基本を学びました。火力、ディーゼル、風力などと組み合わせる上での基本ですね。これを学ぶことから始めました。

 ──2011年10月に発表した沖縄県宮古島「全島エネルギーマネジメント実証事業」(こちら参照)にも、そのノウハウが生かされているわけですね。

 稲葉 そうです。宮古島の電力システムは風力、ディーゼル、太陽光、そして蓄電池。これだけのエネルギーソースをミックスして供給し、かつ、需要側でどのように使われて、どんなバランスを取れるか。これらを実証実験しています。

 宮古島は一つの島ですから、ここにすべての活動が集約されている。これと同じモデルをアイランド状になっている都市や地方などに応用できます。太陽光といえば、それまでは砂漠や草原などに設置するのが常識でした。しかし、他のエネルギーソースと同居させ、その中でどう活躍させるのか。そういう太陽光システムを構築するという点では、東芝が一番有利だと思っています。

 

3ステップの事業構想

 ── まさしくスマートグリッドですね。そうした時代を見据えつつ、現在注力していることはどんなことでしょう。

 稲葉 まず一つはレッドオーシャン、目の前の競合他社との戦いですね。メガソーラーなどに対して我われは、どうやればより長く安定的に発電できるか、その運用モデルを電力会社と共同で開発しています。こういう情報がきたら「これは故障だ」とか「しばらくしたら劣化する」とか。その場合、変えた方がいいのか、このまま使った方がいいのか。あるいはモジュールとパワコンの比率をどうすれば一番効率的に発電できるのか。そういう運用モデルを作り、20年間トータルの発電量をマキシマイズさせるという技術を武器に、レッドオーシャンを戦い抜きます。

 その次のフェーズではクラウドと知識処理、そしてオペレーション&メンテナンスがポイントでしょう。この3つは同時に使うものですが、基本的にはオペレーション&メンテナンスの管理コストをいかに安くできるか。そして上がってきた情報を遠隔監視し、適切かつ迅速に解析処理する能力が重要と考えています。

さらに次の段階でスマートグリッド、スマートコミュニティというふうに進んでいくと思っています。大型のメガソーラーはスマートグリッドですね。小型はスマートコミュニティということで、蓄電池や家庭用電源などと併用することになります。少し先のスマートグリッド時代になった時に、他の電力流通機器との最適な合わせ技が展開できるようにしたいと考えています。

 ── 例えば遠隔監視サービスですが、これは東芝ユーザーだけでなく、他社製品ユーザーも視野に入れた太陽光発電所向けのサービスになるのですか。

 稲葉 その可能性は十分にありますね。結局、固定価格買取制度がある20年間というのは、ある意味で投資商品と同じですから、必ずファンドマネジャーがいます。そして遠隔監視を用いてシステムの状態を把握するということは、ファンドマネジャーが、ファンドが今どう動いているのかをマネージメントすることとほとんど同じことです。

 ですから自社製品だけでなく、他社製のシステムをマネージメントすることも可能です。

 ── 重電メーカーの中では御社が一番柔軟な印象です。スマートグリッドやメガソーラーの事業を推進する一方で、住宅用では発電効率No,1のモジュールを擁しトップクラスのシェアを維持しています。

 稲葉 それは多分東芝には、量産物(家電等)とインデント物(非標準品)の二つの文化が共存しており、そのことが何ら不思議ではない会社だからだと思います。例えば他の重電メーカーが撤退したり縮小したテレビやパソコン、半導体などの事業が東芝にはありますし、インデント物もやっています。量産物に近いのが住宅用太陽光、そしてインデント物に近いのがメガソーラー。これは大きなメリットだと思いますよ。他はどちらか一方が強いというメーカーさんが大半ですから。

 そして今後確実にいえることはメガソーラーと住宅用の、その中間ぐらいの規模の需要が増えることです。

 このセグメントを攻める時に、多くのメーカーは一つの文化だけで攻める。家電メーカーは住宅の感覚で攻めるでしょうし、メガソーラー・メーカーはメガの感覚で攻める。さて、うちはどっちでやるかな(笑)。

 

キーワードは「クラウド」

 ── 太陽光発電ビジネスの可能性についてうかがいます。今は売電装置という認識が大半ですが、今後、他のビジネスに発展する可能性を持っているのでしょうか。

 稲葉 大きなキーワードは「クラウド」だと思います。クラウドサービスを、全国に分散している太陽光発電所のために、どう使っていくか。あるいは太陽光が集めたデータを、どう処理するか。そして、そこからどんな知識を得るのか──。

 例えば天候がどうなっているのかや雲がどう動いているのかは分かります。あるいは、その家庭が今、どうエネルギーを消費しているかも分かります。そういう各種のデータをクラウドに上げて分析し、分析データを使うという新しいビジネスが出てきます。太陽光はその入り口ビジネスとして非常に使える。小さいものから大きいものまで。

 ── ユーザーにとっても、新たなメリットが生まれると。

 稲葉 はい。必ずメリットになると思います。そうしたデータは今まで、屋根の下の人にはあまり還元されませんでした。しかし、今後の太陽光市場ではそのデータを提供することで、例えばサービスチケットがもらえるとか、電力の足りないエリアに電力を譲るとか….。今はまだ、できませんが、将来的には新たなチャンスが広がると思います。

 ── 自分が所有する太陽光発電のデータが資産になる。

 稲葉 そうです。データも資産ですし、エネルギーも資産です。もちろん自分たちで消費すれば、それも資産。この資産をどう使うか、資産運用法を分析する会社が出てくると思います。

 

“純”発電装置としての太陽光

 ── 東芝もそういう事業を考えているということですか。

 稲葉 ええ。クラウドを使う場合の、一つのアプリとして考えています。売電というのは、比較的単純なビジネスモデルなんですね。

 しかしクラウドを使って、どういうデータを消費者に提供するか、どう分析するかというのは簡単ではありません。そのビジネスに早く気付いて手を打つのが、太陽光のフェーズ2のビジネスでは非常に有効だと考えています。例えば当社がドイツで展開している、自己消費をしたらボーナスがもらえる「自己消費モデル」。これは将来、日本に逆輸入されるかもしれません。

 ── 売電するよりも自分で使う方がメリットが出てくる。

 稲葉 そうです、自分で使ってくれれば、電力会社は供給が不安定な太陽光の電力を使わなくて済みますし、ユーザーもボーナスがもらえてハッピーです。こうなれば、うまく正のサイクルが生じます。

 再生可能エネルギーが増えてくると、そういうサービスが日本にも輸入される。その時代になってどういう事業を展開するかということは、今から考えておかないといけないでしょうね。

 ── そうした予測と、最近話題になっている「発送電分離」とは関係がありますか。

 稲葉 恐らくあると思います。例えば今の固定価格買取制度の期間は20年ですが、では21年目からはどうするんですか。モジュールの劣化率は20年で20%といわれていますが、多くは、そんなには劣化しません。多分、80%以上は発電するので、42円で売電できなくても、発電資産は残ります。つまり21年目からは完全に発電装置としての意味が出てきます。

 そのことを見越したサービスやソリューションが、これから相次いで生まれるはずです。それをどう考え、その日のためにどのメーカーを選ぶのかが、ユーザーにとって大きなテーマだと思います。

 ── お話しをうかがっていると、これから人とエネルギーとの関わり方が大きく変わっていくのだろうという予感がします。

 稲葉 そうです。とにかくすごくチャンスがあるんですよ、発送電分離には。特に太陽光にとっては本当にビッグチャンスです。既存の電機メーカーだけでなく、化学メーカーや素材メーカーなど、新規分野のメーカーが参入を虎視眈々と狙っているでしょうね。

 ですから太陽光は今の形のまま、ずっと存在するのではなくて、七変化したり、他のビジネスを誘導してきたり……。太陽光はそういう入り口であり、かつ、中心となるビジネスになっていくはずです。

 それに早く気付いて、早く行動して、早く仲間作りをした人たちが、第二世代、第三世代に勝っていくのだろうと思います。    (敬称略)

 

 

宮古島市における
「全島エネルギーマネジメントシステム(EMS)実証事業」

2011年に沖縄県宮古島市が公募し、東芝が委託事業者として採択された実証事業(契約期間は2012年3月まで)。火力発電(ディーゼル)に頼る離島で、太陽光発電などの再生可能エネルギーを大量導入した場合に生じる問題点などを抽出し、解決のための技術開発を行なう。主な実証研究は以下の4項目。

①太陽光発電の出力変動を蓄電池で制御し最適な蓄電容量を検証する。
②配電網全体の周波数変動を蓄電池で制御し最適な蓄電容量を検証する。
③気象データから太陽光発電量を予測し、蓄電池と火力発電の効率的な運用法を検証する。
④太陽光や風力、蓄電池を接続した状態でユーザーに配電した際の、電力負荷の平準化方法を検証する。

宮古島の発電容量
火力発電:74MW
風力発電:4.2MW 太陽光発電:4MW 蓄電池:4MW

 

 

 

<<前へ  | 次へ>>

記事一覧に戻る

 

 

goods_icon.gif