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2013.05.31 (シャニム43号掲載)

地方発!世界で活躍する会社Vol.13

こだわりコーヒーで海外へ進出
「ローカル商品」を「世界ブランド」へ!

編集工房リテラ◎田中浩之
株式会社  澤井珈琲   【鳥取県】


▲女の子のイラストを使ったパッケージは、
「反日」を意識させないため、あえて無国籍風にした

 

株式会社  澤井珈琲
鳥取県境港市竹内団地278-6
代表取締役社長  澤井 幹雄
℡ 0859-47-5381
URL:http://www.sawaicoffee.co.jp/
 


▲人気マンガとのコラボ商品を手にする澤井社長


 今年、開業30周年を迎えたコーヒーと紅茶の専門店「澤井珈琲」。鳥取・島根両県に喫茶&物販店舗を6店設け、台湾と韓国にも支店を開設。大手ネット通販市場では「ショップ・オブ・ザ・イヤー」を7年連続受賞中だ。山陰の中小企業ながら、大手メーカー/販売会社が支配するコーヒー業界の中で、着実に成長してきた。その原動力になったのが、澤井幹雄社長の強い決断力と、柔和な笑顔の奥に隠された反骨精神だ。

 澤井は1982年、32歳の時、脱サラしてコーヒー業界に飛び込んだ。きっかけは、ある雑誌で読んだ記事。米屋がパン屋に押されて売り上げが下がり、補てんするためにコーヒーをオフィスで販売しているという内容だ。

 「当時、コーヒーは主に喫茶店で飲まれるものでしたが、これからはオフィスで普及するのではないか、と思いました。単なる感覚、インスピレーションでしたけど(笑)」と澤井は当時を振り返る。妻の由美子(現専務取締役)が大のコーヒー好きだったこともあり、夫婦でコーヒー販売を頑張ろうと決めた。

 

鳥取県にこだわって商品開発

 当初は自宅を事務所にし、ある会社のフランチャイズチェーンとなった。オフィスにコーヒーメーカーを置いてもらい、コーヒー豆を補充する業務だ。だが、店舗がないとなかなか信用されない。そこで、米子市に物販の店を構えたが……。

 「売れなくて、売れなくて…。まだ家庭でレギュラーコーヒーを楽しむ時代ではなかったんですね。1日にお客さんがたった一人の時もありました」

 松江市にも店を出したが、大苦戦。撤退を考えていた時、知人から「市内にこれから発展する振興地がある。そこに出店しては」とアドバイスを受けた。澤井は背水の陣で、新たに店をオープンさせることにした。

 従来の展開では失敗する可能性が大きい。澤井は考えた末、物販に加えて喫茶を設けることにした。さらに、使う水は大山の名水であることをアピールし、当時は珍しかったエスプレッソとカプチーノも提案した。こうしたアイデアが功を奏して、新店舗は大繁盛。喫茶と物販の併設という事業展開パターンができた。

 オリジナルの商品作りにも力を注ぐ。小ロットの商売だからこそできる、高品質・高価格のコーヒー豆も多く扱った。澤井は販路を広げようと、自信のある商品を持って百貨店の商談会などに臨んだ。だが、澤井がいくら熱くプレゼンテーションしても、大企業に所属するバイヤーたちの態度は冷たかった。

 「もう、ぼろんちょ(ぼろかす)ですよ。まるで相手にされない。大手メーカーにしか目を向けないんです。鳥取の会社に何ができるの? という感じが伝わってきました。地方への偏見ですよ」

 いつか見返してやる…。澤井の負けじ魂に火が付いた。インターネットなら大手に勝てるかもしれない。ホームページを立ち上げてネット販売を始めたのは、ちょうど2000年のことだった。

 「当時、大手もネット販売には力を入れていなかったんです。早く展開しておけば、後発に差をつけておくことができる。勝つにはこれしかない、と思いました」

 その後、楽天から声がかかり、楽天市場に出店。当初はあまり売り上げが伸びなかったが、2年後に初めてネット広告を出稿。「コーヒー豆と電動ミルのセット」をPRしたたところ大反響を呼んだ。以降、ネット販売は急激に伸び、前述したようにトップ店舗に昇りつめた。

 一方、新たなオリジナル商品の開発にも一層精力的に取り組む。脳を活性化させる成分を加えた「トリゴネコーヒー」、豆のうま味を強く引き出す「氷温甘熟珈琲」などを世に出した。前者の開発には鳥取県産業技術センターや鳥取大学の協力を得、後者には鳥取県で開発された氷温技術を利用。あくまでも鳥取にこだわるのは「地方の会社と馬鹿にされたから、逆に地方に固執してやろうと思った」という澤井の意地だ。

 

海外での評判を国内で利用

 「我われは東京の企業にも、大阪の企業にもなれない」という澤井。「しかし」と笑みを浮かべながら、「海外へ出れば“メイド・イン・ジャパン”なんですよ」

 澤井の海外進出への模索は2006年に始まった。まず、鳥取県が主催する韓国での商談会への参加だ。韓国は受験戦争が激しいので、トリゴネコーヒーが注目されるのではないか…。期待を胸に海を越えたが、まったく売れない。試飲さえしてもらえない。韓国では日本ほどコーヒーが好まれないのだ。

 次は上海へ。商談ツアーのようなもので、会社を一つひとつ回るから成算があるとのことだった。しかし、ここでもあっさり空振り。3回目は台湾で開かれる商談会だった。「これもだめだったら…」澤井は覚悟を決めて臨む。今度は、すぐに商談がまとまった。台湾は韓国や中国よりもコーヒーが普及しており、受け入れられやすかったのだ。

 台北の三越とそごうにいったん出店。2008年には台湾支店をオープンし、百貨店などとの取り引きを続行した。2011年には韓国にも支店を出した。現在、澤井が注目しているのはタイだ。ここに拠点を置き、東南アジア各国に進出するという構想を練っている。

 「今タイに入っている大手はUCCだけ。コーヒーの生産国でもあるので、保護関税が30%もあって進出しにくいんです。この先、自由貿易協定が締結されると、日本からどっと押し寄せるでしょう。その前に独自のルートをぜひ作っておきたい。ほかに中国からも声がかかっていますが、国情が難しい一面もあるので、あまり無理しないで、徐々に進んでいけたらと考えています」

 澤井が描く海外戦略は、直接的な販路拡大だけが狙いではない。「海外の人気商品」というステータスを得ることが大きな目的だ。地方の中小企業にとって、これは強力な武器になる。鳥取発のローカル商品が、世界的ブランドという、まったく違うイメージを身にまとうことができるからだ。そして国内のバイヤーや消費者に改めて注目され、大都市圏の市場に食い込めれば…と澤井は目論んでいる。

 実は海外戦略にはもう一つ、澤井のごく個人的な、密やかな思いが込められている。

 「以前、けんもほろろに扱ってくれた会社から引き合いがあったら、お返しをしてやりたいんですよ。弊社は鳥取県の小さな企業なので、御社のような大企業とはお取り引きできません、とね。おかしいですか? でも、これぐらいの根性、プライドがないとやっていけません」

 澤井は記者の目を正面から見据えながら笑った。 

 

 
▲手前が物販、奥が喫茶コーナーになっている店舗

 
 

 
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