ビジネスに役立つ情報サイト。 ヤマダ電機法人営業部と連動し、中小企業に役立つ経営情報やIT情報を発信します。

RSSfeed

2013.02.28 (シャニム42号掲載)

福島敦子のアントレプレナー対談 No.42

株式会社アクセルスペース◎中村 友哉 社長

超小型衛星を多数打ち上げて
地球規模の新インフラを構築!

 

株式会社アクセルスペース東京都千代田区)

●所在地:東京都千代田区神田小川町
二丁目3番13号 M&Cビル7階
●電話:03-5577-4495
●資本金:1000万円
●事業内容
超小型衛星等を活用したソリューションの提案
超小型衛星及び関連コンポーネントの設計及び製造
超小型衛星の打ち上げアレンジメント及び
運用支援・受託
●URL http://www.axelspace.com

 

 


やっぱりビジネスだ!

 福島 人工衛星を作るベンチャーと聞いておどろきました。まずは起業のきっかけから教えてください。

 中村 我われ創業メンバーは大学時代に、すでに超小型人工衛星を作っていたんです。スタンフォード大学のある教授が、学生に衛星を作らせようという提案をしましてね。日本からは東大と東工大が参加し、キューブサットという世界最小の人工衛星を作ったんです。当時、「学生に衛星なんか作れるわけない」といわれましたが、学生なりに頑張りまして、2003年6月、ロシアからの打ち上げに成功したんです。5機打ち上がり、実際に動いたのは我われ日本が作った2機の衛星だけでした。

 福島 その時の感激はすごかったでしょうね。

 中村 ええ。自分たちが作ったものが宇宙で動くというのは、なかなか体験できません。やっぱり感動しましたね。

 福島 そもそも大学で人工衛星を学ぼうと思われたきっかけは?

 中村 それが、私は宇宙へのこだわりがなかったんです。宇宙好きな人って、子どもの頃から好きな人が多いのですけど、私は別に。高校時代は化学が好きだったものですから、東大と併願したのは早稲田の化学でした。

 東大の理科Ⅰ類に入学したのですが、そこで恩師である中須賀教授(東京大学工学部教授・中須賀真一氏)に出会いました。教授から人工衛星を学生が作ろうとしているという話をお聞きし、「ぜひ、やってみたい」と直感しました。自分たちで衛星を作れるなんて考えてもいなかった。そういう機会が得られるのなら、ぜひやりたいと思い、それで化学は捨てて航空宇宙へ(笑)。

 福島 そうですか。ただ、人工衛星を製造する会社まで起業するというのは、これまた、すごくスケールの大きな話ですね。

 中村 最初は純粋な興味から衛星を作っていたんですけれども、やはり衛星がだんだん難しく複雑になっていく。それにつれて「単に自分たちが楽しんでいるだけでは駄目だ」との思いが強くなってきたんです。次のステップとして「衛星を使う人」が出てこないと駄目だなと。

 誰か使う人がいるということは、衛星に対して対価を払い、それをもらって作る人が必要になるわけです。ところが、超小型衛星は世に出てきてからまだ10年ちょっと。そういう体制は世界のどこにもないんです。

 そういうことを考えると「やっぱりビジネスだ」と。ベンチャーでも何でもいいから起業して、ビジネスにしたいと強く思いました。

 

ヘリコプターの所有と同程度

 福島 実際に顧客がいるかどうか分からない段階で、起業を決意されたわけですよね。「超小型人工衛星がビジネスになる」という手応えや確信がおありだったのですか?

 中村 そうです。宇宙は今後絶対にビジネスになると思うんです。人間は陸、海、空と進出し、成熟するとビジネスにしてきました。宇宙も必ずそうなると思います。我われがやらなくても、そうなるはずです。

 今は国(JAXA)が中心となって大きな衛星を作っています。1機何百億円もする衛星を作り、これを100億円かけて打ち上げています。

 これだといつまで経っても民間の入る余地がない。JAXAには年間1800億円ぐらいの予算が付いていますが、これは基本的には宇宙機器メーカーに宇宙事業を続けさせていくお金なんです。

 福島 宇宙事業を続けさせていく?

 中村 つまり、ロケットを作っている重工業会社や衛星を作っている大手電機メーカーですね。彼らが技術開発を続けるために、予算が付いている。これだと作ることが半ば目的化し、「どう使おう」というところまでいかないケースが少なくないんです。時には打ち上げてから「この衛星の使い方を皆さん考えてください」と公募したり。

 福島 そんな感じなんですか。

 中村 それでは駄目だと思っています。民間が本当に使える世界を作りたい。それには何百億円もかかっていたら、とてもじゃないけど参入できないですよね。

 一方、超小型衛星であれば、できることは大型衛星よりも制限されますが、価格は100分の1、製造スピードも10分の1。1億〜3億円ぐらいでできるわけです。

 個人で持つには高いけれども、例えばヘリコプターも1機3億円ぐらい。ヘリを所有する会社はたくさんあるじゃないですか。衛星の所有とは、それぐらいの経営判断でいいんです。超小型衛星を使うことで新たなビジネスに発展できるのであれば、十分に採算が合うと思っています。

 福島 JAXAや大手電機メーカーに入社しようという気持ちは、まったくお持ちではなかったのですか?

 中村 入社すれば宇宙関係の仕事には就けたと思いますが、超小型衛星ではないですよね。大型衛星の一部分を担当することになる。しかも、大型衛星は1機作るのに10年かかる。定年までに、3機か4機の衛星を作って終わりということになっちゃうわけです。

 福島 なるほど。たった3つか、みたいな(笑)。

 中村 しかも、一部分しか分からない。プロジェクト全体を見られないんです。宇宙開発全体のプロセスを大学で経験させてもらってきた身としては、やはりその経験を活かすような場を作りたいと思いました。

 

ウェザーニューズとの出会い

 福島 ウェザーニューズさんとの出会いが転機になったそうですね。

 中村 当社で製造中のウェザーニューズ衛星1号機で、その技術担当をされている方が東大の航空出身なんです。そして、自社衛星を持ちたいという気持ちを強く持たれており、恩師の中須賀教授と共同研究をやっていました。その話をお聞きし「我われが御社の衛星作ります」と提案したことが始まりでした。

 衛星を必要とする理由は、温暖化で北極海の氷が溶けきたからです。それで夏期は船が通れるようになった。北極海航路を使えば日本からヨーロッパまでの距離が3分の2ぐらいに短縮できる。船は1日早く着くだけで、数百万から1000万円のコストを圧縮できますから、船会社さんには非常に魅力的な航路なんです。

 ただし、温暖化で溶けた巨大な氷の塊は、1日何十キロも動きます。その情報を知らないで通ると大事故につながりますから、安全情報が必要なんですね。ウェザーニューズさんは、その情報を提供するサービスの準備を進めているんです。

 ただ、今までの状況でやるには海外衛星の画像を買うしかない。そのデータを基に、氷の動きをシミュレートして「こういけば安全だよ」という情報を発信するわけですが、海外衛星の問題点は、他の国もやっぱり御多分にもれず、国が中心となってやっていること。たいていは軍がお金を出していますから、軍のミッションが入れば、それが優先されます。ほしい時にほしいだけの画像を得られない点が、1つの大きな問題なんです。

 しかも、情報入手の頻度も1週間に1回ぐらい。それも3日遅れのデータ。氷は生き物ですから3日前のデータでは、シミュレーションの初期値としては悪過ぎます。できるだけリアルタイムに近い形で情報をほしいということで、これを実現するには自分たちの衛星を持つしかないという結論になったんです。

 福島 その衛星はいつ打ち上がるのですか?

 中村 正式には決まっていませんが、今年の春から夏頃だと思います。

 福島 それに成功すると、会社にとっても大きな一歩ですね。

 

第2のインターネットへ

 福島 北極海の情報提供は分かりやすいのですけれど、他にどんな使い方が考えられるのですか?

 中村 超小型衛星は、細かいものを見るのは苦手なのですが、たくさん打ち上げることで、頻繁に見ることが可能なんです。

 例えば陸域観測衛星「だいち」が同じ場所を見るのは42日に1回。もし、その日に雲があったら、次回の観測ではもう季節が変わってしまいます。超小型衛星はたくさん上げることで、頻繁に見ることができる。つまり細かな変化を見つけられるんです。これを実現する手段は、これまでありませんでした。

 我われはこれを、一種のインフラに仕立てたいと思っています。それこそ、グーグルアースのリアルタイム化ですね。地球の24時間の情報を誰もが見られる世界にしたい。衛星が主役ではなくて、その衛星が提供するデータを元に、いろんな人の役に立つソリューションが、あちこちで生まれればいいと思っています。

 グーグルも最初はそうだったじゃないですか。検索エンジンを無料提供し、それを使ったいろんなサービスが世界中で生まれました。

 超小型衛星を私は第2のインターネットだと思っているんです。なぜかというと、インターネットは情報を瞬時に世界へ伝えられますが、それが本当かどうかを確かめる術がないからです。例えばどこかで内戦があり、ジャーナリスト全員をその国から追い出してしまったら、大統領が「内戦は終わった」と宣言しても、真実を確かめられない。

 ところが超小型衛星で状況を刻々と見られれば、状況が分かる。世界平和にも貢献できるだろうと思っています。新しい価値ですね。インターネットにもう1つレイヤーを加えた感じ。そういうインフラを、超小型衛星で実現したいんです。

 大型衛星でもたくさん打ち上げれば実現可能ですが、何百億円×何十機という資金は誰が出すのという話になる。超小型衛星は1機当たり100分の1ですから、投資家さんには出せる額ですよね。

 あとは個別のお客様ですね。ウェザーニューズさんは北極海を見たい衛星ですから、載せているセンサーなどもそれ用にカスタマイズしています。個別のニーズを聞いてフィットするものを作る「マイ衛星サービス」ですね。これも同時に進めていきたいと思っています。

 福島 まさしくフロントランナーですね。

 中村 我われがなんとしても成功させて、これを産業にしたい。日本のお家芸にしたいんです。超小型衛星は今、世界が横並びです。技術的には同じ頃に始まり、同じように発展してきました。

 我われがインフラになる小型衛星網を構築すれば「超小型衛星といえば日本だよね」と、そういってもらえる分野になると思っています。

 

補助金の付け方に異議あり

 福島 超小型人工衛星がお家芸になれば、日本経済の活性化も期待できます。その実現には、どんな課題がありますか。

 中村 補助金の付け方じゃないでしょうか。「宇宙は大事」という認識は国にもあるんです。ただ、お金の付け方がまずくて、衛星を作るための補助金を出している。僕らからすると、もっと効率のよい税金の使い方があるように思えてしまう。

 なぜかというと、作る人にお金を付けても、使う人がまったく育たないからです。使う人が増えないと意味がないので、補助金を付けるなら「使う人に付けてください」と強く思います。その人が、そのお金で我われに発注してくれればいい。そうなれば使う人も成長していく。「衛星はこう使えばいいんだな」と。

 福島 国が公募して、衛星の優秀な用途に対して補助するとか。

 中村 そうです。どうしてそういう方向にいかないのかなと、強く思っています。

 福島 人工衛星を先端技術ではなく、「もう道具にしてしまいましょう」ということですね。

 中村 そうです。ここまで技術が成熟してきたのだから、次は民間の力で、ニーズに合わせて発展できる仕組み作りが必要なんです。

 福島 例えばどこかの飲食チェーンなどが「こういう衛星データが欲しい」と思っていたとしても、作る側には分かりませんものね。

 中村 ええ。実際、衛星を使ったエリアマーケティングの話はあるんですよ。例えば中国でどこにスーパーを出店したらいいのかを判断する際、衛星データは非常に効果的です。

 そういう衛星データの使い方を公募して、いい提案をしてきたところにお金を付ければいい。我われは彼らの要求、ニーズに基づいて衛星を作りますから、本当に使われるいい衛星ができます。

 

 

自分たちがやるしかない!

 福島 そう考えると、あらゆる業種で利用法が考えられそうですね。

 中村 そうです。いろんなところに使えますよね。渋滞監視なども検討テーマの1つです。今はカメラで状況を見て「渋滞何キロ」と表示していますけど、やはり上から見ると面で見られるので、リルートも最適にできるんじゃないか、という話が出てきています。

 やっぱり、いろんな人が考えると、いろんなアイデアや用途が出てくる。それを期待しています。我われから出てくるものなんて、本当にタカが知れてる。変な先入観も、持ってしまっていますしね。「衛星はこれはできて、これはできない」などと考えないようにしても、やっぱり、その考えが入ってきちゃう。

 そうではない、まっさらな人からこそ「こんなこと、できませんか」と。それは突拍子もないことかもしれませんけれど、そこから何か新しいミッションやプロジェクトが生まれる可能性は十分にあります。そういう可能性に賭けたいですし、その力を超小型衛星は持っています。

 福島 中村さんは本当に楽しそうにお話しされますね。超小型人工衛星の可能性を信じているというか、多くの人のビジネスや幸福や生活の利便性などに、本当に貢献できるということを確信されていますよね。まだ始まったばかりでご苦労もたくさんおありでしょうけれど、でも、とても楽しそうにお仕事されているなと、そう感じます。

 中村 ありがとうございます。やはり私が「超小型衛星は無理かもしれない」などと思ってしまうと、社員にも伝わってしまいますし、そんなことを考えていたら、これだけリスクのある起業はできません。

 IT企業でしたらパソコン1台から始められますけれど、衛星を作るには場所も必要ですし、製造業ですから固定費も大きい。そういう中で、「これは絶対にできる」「自分たちがやらなかったら、絶対に他がやっちゃう。だから、自分たちがやるしかない」という使命感を常に持つようにしています。   (敬称略)

 

中村友哉(なかむら・ゆうや)氏
1979年、三重県生まれ。東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了。在学中に超小型人工衛星の開発に携わる。2002年、学生が作る世界初の超小型人工衛星「CubeSat」のプロジェクトに参加し、2003年に打ち上げ成功。その後、研究室で3つの超小型人工衛星の打ち上げに携わる。卒業後、大学発ベンチャー創成事業を経て、2008年アクセルスペース設立、代表取締役兼CEO就任。


 

 

 インタビュー後記

 目を輝かせ、夢中でビジョンを熱く語る若者に思わず惹きこまれてしまった、そんなインタビューでした。お話をうかがうまでは、超小型人工衛星の ビジネスというもののイメージがわかなかったのですが、聞けば聞くほど説得力があり、宇宙ビジネスの可能性の大きさを実感させられました。技術開発のための人工衛星ではダメで、それを使って世の中にどう貢献できるかこそが大切という指摘は、日本の製造業全体にもいえることでしょう。

  これからのもの作りは、技術力以上に、マーケティング力が問われる時代だと思いますが、そうしたセンスも中村社長はお持ちのようです。世界初の 人工衛星製造ベンチャーを立ち上げた勇気と実行力に敬意を払いつつ、中村社長にはぜひ、宇宙ビジネス界のスティーブ・ジョブスを目指してほしい。そんなアントレプレナーが日本から誕生したら、日本を覆う閉塞感もずいぶん吹き飛ばされそうです。

福島敦子(ふくしま・あつこ)

 キャスター・エッセイスト。津田塾大学英文科卒。中部日本放送を経て1988年に独立。NHK、TBSなどで報道番組を担当。テレビ東京の経済番組や週刊誌「サンデー毎日」でのトップ対談など、これまでに500人を超える経営者を取材。経済の他、環境、コミュニケーション、地域再生、農業・食などをテーマとした講演やフォーラムでも活躍。企業の経営アドバイザーも務める。ヒューリック(株)社外取締役。島根大学経営協議会委員。1997年にはワインアドバイザーの資格を取得。著書に「愛が企業を繁栄させる」(リックテレコム)をはじめ、「それでもあきらめない経営」「ききわけの悪い経営者が成功する」「就職・無職・転職」「これが美味しい世界のワイン」などがある。

 

 

 

<<記事一覧に戻る

 

goods_icon.gif