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2011.05.31 (シャニム35号掲載)

本田雅一の“先取り”家電インフォ!連載4

テレビの画質を圧倒的に高める!
 「複数枚超解像技術」の衝撃
本田雅一の“先取り”家電インフォ!

フリージャーナリスト
本田雅一
http://blogs.itmedia.co.jp/honda

 
 ご存じのように3月末でエコポイント制度が終了した。テレビの需要もこれで一段落となるが、7月には地上アナログ放送の終了というイベントが残っている。東日本大震災の影響からスケジュール変更もささやかれたが、東北の被災三県を除く地域では予定通りに行なわれる。

 アナログ停波後もしばらくは、アナログテレビからの駆け込み需要も考えられるため、メーカーは製品ラインアップを昨年とは変えてくるだろう。今年の傾向は、高付加価値製品と中小型テレビ需要の高まりのという、両極に分かれた形で展開することになるだろう。

 

26V型フルハイビジョンが登場

 まずは7月のアナログ停波に向けては、中小型テレビのラインアップ充実、販売プランの強化が行なわれるだろう。停波ギリギリまで買い換えない消費者は、あまり大きなテレビを求めないと予想されることもあるが、寝室や書斎などのテレビの買い換えが進むことも理由の1つだ。

 小型の多くがコストを重視し、経済的な負担を軽減する方向で作られている。しかし、単純に低価格テレビを選ぶだけではもったいない。小型テレビはネットワーク機能を重視した方が圧倒的に楽しめるからだ。例えばリビングのレコーダーの映像を、ネットワーク経由で楽しめる機能を各社とも提供している。

 最低でも、そうしたネットワーク機能を持つ製品を選んだ方がいい。今は映像サーバー機能を持たないレコーダーしか持っていないという方も、いつかはレコーダーを入れ替える。寝室や書斎などの小型テレビは買い換え間隔が長いため、ネットワーク連携が得意な製品を選んでおけば、将来、思わぬ便利さに頬を綻ばせることができるだろう。

 小型テレビに関しては、もう1つ注目したい傾向がある。今年は機能によるバリエーションが、提供され始めていることだ。ネットワーク機能の充実は、その現れの1つといえるが、さらに大型モデル並みの高機能を備えるものも登場した。

 東芝のレグザZPシリーズは32インチと26インチの2モデル構成で、フルHDの画素を備えている。これまでフルHDの最小モデルは32インチだったが、一気に6インチも小さくなった。単に小さくてフルHDというだけでなく、今年から新たに投入されたCEVOという名前の最新映像処理エンジンを搭載した、紛れもない“小さな高付加価値モデル”である。

 そんなサイズでフルHDであることに意味があるのか? 開口率が下がって暗くなるのでは? という疑問を持つ読者もいるかもしれないが、その点はまったく心配無用だ。テレビらしい明るいパワフルな映像を備えており、解像度の面でも明らかな情報量の増加が感じられる。

 このサイズならばHDMI端子にパソコンを接続し、パソコンディスプレイと兼用で利用するといった使い方もできる。テレビにパソコン画面を映すと画質面で違和感を抱くことが多いが、きちんとパソコン表示に適した画像モードを備えているので違和感なく使うことが可能だ。

▲26V型フルハイビジョン「東芝26ZP2」

 

複数枚超解像技術とは!?

 特に注目したいのは、CEVOを搭載したことで複数枚フレームを用いた超解像技術「レゾリューションプラス6」を、26インチモデルにも採用したこと。これまではサイズが小さくなるほど機能面、画質面での対策が甘くなっていたが、やっとコンパクトでパソコンディスプレイ兼用、そしてテレビの機能も一流という製品が登場した。今後、他社も続いてくれることを望みたい。

 この複数枚フレームを用いた超解像技術は、今年のトレンドになる。この技術は常時、フレームの前後から同じ被写体を抽出し、それぞれのフレームに微妙にズレながら映っている被写体の持つ情報を合成。1枚の映像には含まれていない微細信号を復元しようというものだ。

 複数フレームを参照する高画質化の技術は、例えば監視カメラで映像を鮮明にするためなどに使われてきた。だが、放送からの遅れを意識しない程度まで、処理の遅れを小さくするのは難しい。単純に参照するフレームだけでも4倍になるため、処理する画素の数も4倍に達する。従来方式に比べると、はるかに大きな能力が必要になるが、それ故に“明らかに映像が持っている情報が増える”のだ。

 ソニーもX-リアリティという新しい映像処理エンジンを開発した。特にX-リアリティ・プロと名付けられた上位版は、CEVOと同じく複数枚参照型の超解像技術を搭載している。

 これらの機能に関する詳細な処理ノウハウを、両社とも完全に公開しているわけではない。

 しかし、筆者が両社の担当者からもらっている情報からすると、おおよその処理手法は似ている。昨年までの超解像処理は、表示するフレーム(現在フレーム)に対して周波数特性を伸ばす処理を行なっていた。今回はさらに踏み込み、過去2フレーム、未来1フレーム、つまり4つのフレームを参照して1枚の情報量が増えた絵を創り出している。

 現在フレームの映像が、過去と未来のフレームのどの位置にあるかを検索。同じと思われる映像を比較する。完全に静止した映像では情報量は増えない。しかし、動画は微妙に画素をまたぐ位相がフレームごとに変化するため、複数を参照することで解像度を高めることができる。

▲ X-リアリティ・プロ搭載「ソニー55HX920」

 

顕著になる消費の二極化

 ハイビジョン放送に対し、この複数フレーム超解像を行なう意味があるのか? という素朴な疑問もあるだろう。だが、多くのハイビジョン映像は、その解像力ギリギリの情報が詰まっているわけではない。また、複数枚の映像を参照・補正する課程でノイズの緩和効果もあるため、特に地上デジタル放送での効果は目を見張るものになっている。

 さらに、放送波は1080/60iで放送されており、例えば細かな折り目の衣裳や瓦屋根の見える風景などでカメラがパンすると、ジラジラとしたノイズが出てくる。複数枚超解像では、前後のフレームに正しい情報を求めるため、I/P変換に伴うノイズがほとんど目立たなくなる。該当する映像を見れば、誰もがひと目見てわかるぐらい優れたものだ。

 しかも、フォーカスの合った部分は、より精細感のある描写で描かれ、大変にシャープな映像となる。輪郭強調の場合、映像ごとに質がばらついたり、全体にシャープ感が上がってしまい奥行きが失われる傾向があるが、複数フレーム超解像では本来あるべき映像が浮き上がり、輪郭強調のような弊害がない。今後、他社も同様の技術を順次採用していくだろう。年末には新しいメーカーも加わっているはずだ。

 前述したように地デジ終了の駆け込み需要はアナログ停波を境に減少すると考えられる。これら駆け込み需要は小型のコスト優先な人中心となるが、一方で「本当に優れた製品がほしい」という本物志向の消費者も増えるのではないだろうか。

 すなわち、より良いものがほしいという層とテレビは映れば十分という層、両極に分かれるのが特徴……とメーカーが考えているからこそだ。

 消費者側も、そうしたメーカーの考え方の変化をうまくとらえていけば、より良い買い物のための参考になるのでは? と思う。

 

これからスマートフォンが起こすこと。

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