ビジネスに役立つ情報サイト。 ヤマダ電機法人営業部と連動し、中小企業に役立つ経営情報やIT情報を発信します。

RSSfeed

2011.02.28 (シャニム34号掲載)

IT活用事例 自治体 栃木県足利市

職員の連携強化に庁内SNSを構築
アイデア発掘など様々な効果の兆し

職員の連携促進や情報共有で市民サービスを向上させたい
その実現を目的に庁内SNSシステム「AICO」を導入
導入目的や利用指針の周知徹底により、活用促進に取り組む
コミュニケーションの深化、情報伝達の迅速化やコスト削減などに期待

 

 

 「全国放送の子供向けテレビ番組で足利市のPRをしてみたら、いい宣伝になると思います」。

 庁内の一般職員が、直接の業務とは関係ないアイデアを何気なくブログに投稿。その日のうちに、市長から「それは、いい考えですね」とコメントがついた。すぐに担当課からテレビ局に働きかけ、その実現に向け取り組み中だ。

 これは、足利市が導入した庁内SNSシステム「AICO(アイコ:足利・インフォメーション・コミュニティ)での成果である。同市では、「部署を超えた職員間コミュニケーションの活性化や情報伝達の迅速化、庁内に埋もれた情報を発掘し、それを市民サービスへつなげていく」(足利市政策推進部情報管理課の萩原正弘課長)ことを目的に、2010年4月からAICOの本各運用をスタートさせている。

 「以前に比べて庁内の風通しはよくなってきたとはいえ、まだまだ縦割り構造からは脱却していない。職員のコミュニケーションは所属の部課に限られ、市長の考え方さえ末端の職員までは浸透していない」と指摘する萩原課長。これを解決しようと導入した仕組みが庁内SNSだ。

 SNSとは、人のつながりを促すコミュニティ型サイトで、趣味や嗜好など様々な共通目的をベースとした集まり(コミュニティ)、ブログといったコミュニケーションを円滑にする手段や場を提供する。“つながり”を重視するため紹介による会員制サービスが特徴だが、最近はだれでも自由に登録できるサービスも増えている。民間では「mixi」や「Facebook」などが有名だが、その自治体版が庁内SNSといえるだろう。

 公募した中から選定した既製ソフトウエアをAICOのシステムベースに採用。ブログやコミュニティ機能を備え、コミュニティの公開/非公開などは自由に設定が可能である。職員証の顔写真などの個人データを利用して、正規職員約1200人を登録。公民館や保育所など市管轄の出先機関も、すべて庁内LANでSNSネットワークとしてつながっている。

 基本的にAICOを利用できるのは庁内のPCのみ。職員の自宅などからのアクセスに対してはクローズされているが、携帯電話からは利用可能である。

足利市は行政・防災情報を市民に知らせる「電子かわら版」や、公式ツイッターの運用などIT活用を加速させている
▲足利市は行政・防災情報を市民に知らせる「電子かわら版」や、
公式ツイッターの運用などIT活用を加速させている

 

 

用紙消費の削減にも効果

 成果は上々だ。冒頭のボトムアップ案件の取り組みもその1つ。萩原課長は「一般職員が市長に接することはほとんどなく、職員提案制度はあるが届くまでには時間がかかる」といい、「埋もれたアイデアを発掘すると共に情報共有し、それをスピーディーに形にしていく上でSNSは大いに期待できるシステム」と話す。

 行政では紙ベースの回覧が一般的で意思決定を遅らせる要因だが、この点でもSNSは役立つ。足利市では庁議メンバーだけが参加できるコミュニティを庁内SNS上に作成。会議資料などをコミュニティ上に掲載することで、情報伝達のスピードを早めている。また、最終的にコミュニティを公開することにより、決定事項を全職員へも迅速に伝えることが可能だ。以前は紙ベースで連絡していたので回覧に時間を要し、情報が全職員に行き届くのが遅かった。

 ここでは、ペーパーレス化によるコスト削減にもつながる。「もともと情報の伝達は、各部課でコピーした用紙の配布が基本だった。例えば情報管理課では、届いた業者からのメールもコピーして他部署に知らせていたほど」と萩原課長。「決定事項や全庁レベルで有用だと思われる情報を庁内SNSに載せれば用紙消費が少なくなり、コストを抑制できる」。試算では、百数十万円の削減効果が期待できるという。

 また、情報収集ツールとしてAICOを活用する職員もいるとのこと。「ブログなどに質問や疑問を投稿して、全職員からアイデアや解決策を募るという点でも効果的な仕組みだ」(萩原課長)。

 導入から約10カ月が経過した時点で、作成されたコミュニティ数は200に迫る。部課単位の集まりが半数ほどあるが、残りの約100件は同一業務をこなす関係者の情報共有や、期間限定案件の議論の場などの業務関連から、趣味をテーマとしたものまで自発的に立てられたコミュニティで賑わっている。

 

活用促す様々な取り組み

 AICO導入のきっかけは、現市長の大豆生田(おおまみうだ)実氏の当選。自らIT関連会社を起業した経験を持つ同市長は、2009年5月の就任と同時に自治体ホームページの刷新をはじめ、様々な分野でIT化を推進しており庁内SNSもその一環だ。

 5年間のリース料を含め、約700万円を投じてシステムを構築すると共に、「全国でも導入事例が少ない」と庁内SNS活用研究会を組織。本各稼働前から、有効活用や利用促進のための対策に取り組む。具体的に講じた施策は、「導入目的の周知徹底」「利用方針の周知徹底」「愛称の募集」などである。

 導入目的の周知徹底では、もともと各部署に配置していた情報技術関連の担当者向けに説明会を開催。SNS導入の目的を全職員に落とし込んでもらうと共に、AICO画面上の目立つ部分に目的を掲載した。

 「職員の裁量に任せ過ぎるより、ある程度方向性を固めてルール化した方が使いやすい」と政策推進部情報管理課システム担当の山口敏由主査。利用方針を明確化して、それを周知徹底させた。具体的には「公序良俗に反しない」「誹謗中傷しない」といった投稿内容に関することの他、業務と趣味の切り分けも規定している。

 「コミュニケーション促進が目的なので、業務以外の投稿も許可していたが、『本当に何でもいいのか』といった職員の迷いが見られたことから、就業時間中は業務関連に規制して趣味などの投稿は休憩時間を使うよう明文化した」(山口主査)。

 足利市ではAICOと、すでに導入していたグループウエアを併用。いずれも似た機能を備えていることから、両システムの使い分けの基準も設定している。コメントが付き内容を掘り下げられそうな情報は庁内SNS。庁内LANでAICOとつながっていない嘱託職員にも伝えたい事項はグループウエアを利用するという指針だ。

 さらに、「全庁に募集をかけることで庁内SNS導入を周知することを目的」(同前)に愛称を募った。ここで決まったシステム名がAICOというわけである。

 この他、本各稼働前に前出の活用研究会メンバーによるコミュニティ作成や、ブログのサンプル投稿などスムーズに利用を始められる工夫を凝らし、幹部職員への投稿義務づけによりトップダウン方式で利用を促すことなどに取り組んだ。

 この結果、本各導入した当初から大きな盛り上がりを見せた。最近は投稿件数やコメント数が減るなど落ち着いてきたが、毎月のログイン数はのべで3万強、ブログやトピック(コミュニティへの投稿)の参照回数は6万前後とスタート当初の水準を保っているという。

 庁内SNSは、時間をかけてノウハウや知識が蓄積されていくもの。「閲覧数は高いが、投稿している職員は2割程度に留まる」(萩原課長)という課題も見えてきた。さらに活用を促すことで、「成果の兆しを強固なものにしたい」(同前)とのこと。今後の動向にも注目していきたい。

 

庁内SNS「AICO」のトップ画面
▲庁内SNS「AICO」のトップ画面 
 

情報管理課コミュニティのトップ画面
▲情報管理課コミュニティのトップ画面

ブログ投稿例 「市長の考え方を全職員へ迅速かつ確実に伝える」ことも、庁内SNSに課せられた役割だ
▲ブログ投稿例

 「市長の考え方を全職員へ迅速かつ確実に伝える」
ことも、庁内SNSに課せられた役割だ